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なぜ老化は起きるのでしょうか

老化は加齢に伴う細胞の老化や数の減少、萎縮などによって起こります

細胞は何らかの損傷を受けてしまった時に、それを修復することが困難だと遺伝子が判断して、損傷した細胞をそのままにしておけない状態の時には除去します。そして、損傷が除去するまでの状態ではない時には、細胞分裂の能力がある細胞に対しては、細胞分裂の能力を止めてそのままにしておきます。この細胞分裂の能力が止まる事を細胞老化、止まった状態の細胞を老化細胞といいます。

細胞の老化は細胞が損傷を受けるだけでなく、細胞内にある染色体の末端を守る働きをしているテロメアという部位が加齢に伴い短くなって行き、ある長さまで短くなるとその染色体を持つ細胞の分裂能力が失われてしまうという仕組みでも生じます。

ヒトの細胞には、分裂能力がある細胞ばかりでなく、筋肉や神経細胞のように分裂能力が無い(少ない)細胞や、分裂能力が止まっていて状況によっては分裂を始める肝細胞のような細胞があります。これらの細胞は加齢に伴う老化によって数が少なくなったり、萎縮するなどして身体機能を担う細胞の数が少なくなってしまうという状態が生じてしまいます。

老化は加齢に伴う身体機能の低下によって起こります

加齢に伴い細胞の老化や数の減少、萎縮などが、一つの細胞だけでなく数多くの細胞に生じれば、それらの細胞が担う身体機能の低下、喪失は顕著になります。老化だけを表してはいませんが、身体機能の一つである移動能力の移り変わり(移動能力の発達)を表して「ヒトの一生は『4-3-2-3-4』である」と言うことがあります。

ヒトは生まれた時には動くことが出来ませんが、生後3~4か月で首が坐り、寝返りをするようになり、そして、おすわりが出来るようになった後に四つ這い(はいはい)で実用的な移動が出来るようになります。さらにつかまり立ちからつかまり歩きをするようになり、誕生からおよそ1年で二足歩行が出来るようになり、このときに移動能力はほぼ完成となります。

長い二足歩行の時間は過ぎて行き、加齢に伴って老化が見られるようになると、筋力低下に伴い杖歩行や手すりにつかまって移動するようになります。さらに老化が進むと四つ這いでの移動をせざるを得ない状態となります。
これは老化の道筋を良くあらわしていて、最近注目されている健康寿命のひとつについて、それがいつまでなのかを示しているように思えます。

老化は次の世代、その次の世代のあと、その先の世代のために起こります

ヒトの遺伝子は自らの形質を生殖という行為で、次の世代、その次の世代に確実に引き継ぎ、さらに自らの形質を生殖という行為によってより良いものとして行くことに最大限の努力を払います。そのためにヒトの寿命はとても長いものになっています。

ヒトの遺伝子の形質を単に次の世代に引き継ぐだけならば、これほどに長い寿命は不要です。しかし、ヒトの生育にはとても時間と手間がかかり、直接に手をかけ育んで行かなければ、次の世代は成体となりことすら困難です。次の世代が成体とならなければ遺伝子は自らの役割を果たしたことにはなりませんので、自らが存在するヒトの命を守りながら、次の世代を育むという行為をヒトに行わせます。

ヒトをとりまく環境の変化によってヒトが成体となる時間は短くはなっているようですが、遺伝子の目的とする次の世代への引き継ぎは、環境の変化によって遷延しているように思われます。さらにヒトの所属する社会の複雑化、環境の悪化などによって、次の世代を育むだけでなく守ることも行わざるを得なくなりました。

ヒトの遺伝子は次の世代を育むだけでなく守るという行為まで行うようになり、ヒトの寿命は長くなって来ました。ヒトの寿命が長くなることで、次の世代が生殖してその次の世代を育み守るという行為を見守ることが出来るようになり、自らの形質がその次の世代に引き継がれより良いものになって行くことを確かめることが出来るようになりました。

さすがに遺伝子も次の世代、その次の世代より先の世代となれば、自らの形質を引き継いでいるとは言え、より良い形質の獲得のために、自らとは全く異なった形質の遺伝子となっている可能性があります。そして、元となった生命とその先の世代の間には大きなギャップが生じてしまう事になり、遺伝子はその目的が果たせなかったことを確かめることになります。

遺伝子は自らの役割を果たしながらも果たせなかったという、自己矛盾した行為を延々と繰り返し行ってきています。そこで、自らの形質と大きなギャップを感じないところで、自らが存在するヒトの命を終えるようにタイマーをセットしておいて、そのタイマーが寿命に至った時にその役割を終えるようにしています。

ヒトの老化は、遺伝子が自分の持つ形質とその先の世代とのギャップを感じながらも、その先の世代に遺伝子が持つ役割が、自らの形質を引き継いで行くには、命を育み守りそして寿命を全うすることであることを身をもって示し、知恵を授けるために起こるものです。



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