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施設でのお風呂介助の考え方

施設でのお風呂介助の考え方
まず、施設とは何かに注目しましょう。介護保険制度における「介護保険施設」とは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、そして介護療養型医療施設の3施設のみです。つまり、有料老人ホームやグループホームの様に、長期間入所が出来るところであっても、介護保険施設ではないんですよね。ただ、入所する高齢者やご家族にとってみれば、あまりそれらは関係ないと言えるでしょう。
でも、実はここって、実際の介護現場の話をしていくと関係が深いんですよね。というのも、50人を超える様な大規模な人数が入所できる施設は、ほとんどが介護保険3施設になるからです。そして、人数が多ければ多くなるほど、建物や設備などのハード面によって、お風呂の介助をどの様に行うのかが有る程度決まってきてしまう特徴があります。

大人数がお風呂に入る
介護保険法では、施設に対して「1週間に2回以上、適切な方法により、入所者を入浴させ、又は清しきしなければならない」と定められています。法律というのはイヤな書き方ですよね。入浴させなければならない…義務じゃないんですから、と言いたくなりますが、実はこれ、入浴を適切に行っていない施設がそこら中にあったからこうなっているんですよね。そもそも、全ての施設が全ての入所者に対し毎日お風呂に入ってもらう事を当たり前としていたら、わざわざ文言にして定める必要なないはずです。ここで、入所している人数が多い施設は、壁に突き当たります。例えば、100人の入所者が毎日お風呂に入るとしたら、どのくらいの入浴設備と、どのくらいの人員配置が必要なのでしょうか。温泉の様に、広い浴槽を備えておけば皆が自由に入れるのではありません。原則として、何らかの介助や見守りが必要な方しかいないのです。これは、試算してみた事はありませんが途方もない数字になるでしょう。ですから、最低でも1週間に2回、つまり、100人の施設であれば3日かけて100人にお風呂に入ってもらえば良いわけですから、一日30人ちょっとというところでしょうか。そして恐らく、大体の施設が一週間の内一日は、お風呂を行わない日というのがあるでしょう。それでも、一日30人です。寝たまま入れる特殊浴槽、歩けないけれども座る事が出来る人が入れるチェアー浴槽、そして歩くことが出来る人が入れる一般浴槽、これらが各々一つずつの浴室しかない施設であれば、一日30人に入ってもらう事はかなりのペースになります。9時~11時30分、14時~16時30分と5時間お風呂が稼働している場合、300分÷30人で一人10分の時間しかかけられません。健康チェックをした後に脱衣場に来てもらい、服を脱いで身体を洗い、湯船に浸かり、上がり湯をかけて脱衣場に出て、服を着てもらい、お部屋などに誘導する。この時間が10分だということです。これが「イモ洗い」と言われる日本の入浴ケアの歴史になります。どう考えても無理ですよね。だから、ハード面が重要になるんです。

ユニット型の施設
平成18年度の介護保険法の改正に伴い、一部は17年度後半から実施されましたが、ユニット型という施設が介護報酬上でも評価される様になりました。簡単に言えば、入所定員が100人の施設であっても、居室、そして食事を食べたりくつろげたりする食堂、トイレ、など、そのエリアで生活行為が終了できる様に設備自体から内部をいくつかのエリアに区切る、という施設です。一つのエリアの入所者定員は12人程度となります。ユニットケアの細かい話をすると非常に長くなるので触れませんが、このエリアごとにお風呂場がある施設は最高ですね。だって、12人がお風呂に入れば良いのですから、それこそ、毎日だとか2日に一回はお風呂に入れるかもしれません。でも、エリアごとに浴室をつくるのはさすがにお金がかかってしまうので、2つのエリアで一つのお風呂を使う、という様な施設が多いのが現状です。単純計算をしても3日かけて24人にお風呂に入ってもらえば良いのですから、一人一人にゆっくりとお風呂に入ってもらう事も出来ますし、希望する方には、自宅で過ごしていた時の様に夕食後、寝る前にお風呂に入ってもらう事を行っている施設もあります。

日本人のお風呂は、焦ってスタッフに入れてもらうものではなく、ゆっくりと自分主体で入るものです。この様にして、施設であっても、自宅で過ごしていた時の延長上の暮らしを守ること、それが、今の介護のスタンスである「その人らしい暮らし」を送ってもらうための施設でのお風呂介助になります。

設備が無ければ無理?
では、ユニット型のハードが整っていないと、その人らしい暮らしをおくってもらう事は不可能なのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。スタッフを配置する時間を上手に組み立てることで、100人の施設に一つのお風呂場しかなくても、例えば夜にもお風呂に入れる人員体制にする事で昼間のお風呂の人数を減らす事が出来ますから、今までよりもゆっくりと入れる様になります。しかし、その様な人員配置にはスタッフの理解が必要です。当然ながら働くスタッフも、自分の家庭があり、自分の時間があり、自分の人生もあります。ですから、『それが出来れば一番いいことは分かっている。でも…』というように、“でも”がついてしまうのですね。ですから、昔ながらの大規模施設で、入所者にとってなんとか良いケアをしていこうと日々励んでいるスタッフは、どうにもできないジレンマと自分がそれに甘えてしまっている自己嫌悪に陥りやすくなってしまいます。



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