ハザードは危険有害要因という意味で、「リスクをもたらす可能性を持つもの」を意味します。ハザードだけでは、リスクがもたらされることはありません。ハザードに加えて人間の存在・行動があって、ハザードが人間に対するリスクとなります。
ハザードの例として良く挙げられるのが、人間とライオンとの関係です。ライオンだけが存在する場所は、ライオンはハザード(危険有害要因)となります(1×0⇒0)。ライオンだけが存在する場所に、人間がやってくると、ライオンが人間に対して傷害を負わせる危険性が生じるため、ライオンは人間に対するハザードからリスクとなるということです(1×1⇒1)。
介護事故のリスクとなるハザードとは、介護事故を発生させやすい介護ケアの利用者、提供者、環境が持つリスクの顕在化する前の状態と考えられます。
リスクマネジメントは、主にリスクアセスメントとリスク対応とで構成されます。リスクマネジメントの中心となるのが、リスクアセスメントになります。リスクアセスメントでは、ハザードを確かめることを「危険有害要因の同定(特定)」と言います。
リスクアセスメントは、Ⅰ.危険有害要因(ハザード)の同定、Ⅱ.危険有害要因ごとのリスクの見積り、Ⅲ.リスクの評価、Ⅳ.リスクの除去低減対策の検討・実施という手順になります。
Ⅰ.ハザードの同定を行う作業は、①「機械は故障し、人は誤りを犯す(故障とミスは認めましょう)」ことが前提とする。②ハザードの同定を行う前に手順書と危険源リストを作成する。③ハザードの同定を、「手順書から同定する」、「介護ケアの観察を非-常識の目で見る」、「ビデオの活用」などの方法で行うことになります。
Ⅱ&Ⅲ.ハザードごとのリスクの見積もり、評価を行う作業は、①「けがの程度」、「発生(回避)の可能性」、「ハザードに近づく頻度」などの評価要素の決定する。②それぞれの評価要素に対して評価点と評価ランクを決定する。③ハザードごとに評価点と評価ランクを評価して、総リスク点数と総合ランクとを決定することになります。
Ⅳ.リスク除去低減対策の検討では、①リスクの高いものを優先する。②新たなリスクやリスクの移転がない対策とする必要があります。
介護ケアの利用者、提供者、環境がハザード(危険有害要因)であり、介護ケアのサービス・支援の提供が行われることにより、それぞれが介護ケアのリスクとなることを知っておかなくてはなりません。介護ケアのサービス・支援ごとのハザードの評価を知り、リスクとなることが回避できるような体制や対応が可能となる取り組みが必要と考えられます。