コミュニケーションには、コミュニケーションの送り手と受け手とがあります。コミュニケーションの送り手と受け手とでは、コミュニケーションの目的は明らかに異なるものになります。コミュニケーションの送り手と受け手が常に同じとは限らず、コミュニケーションの目的や流れによっては、送り手と受け手が逆転したり、交互になったりすることがあります。
コミュニケーションの主導権(イニシアティブ)は、コミュニケーションの送り手側にあるとは限りません。コミュニケーションのきっかけを作るのも送り手とは限りません。コミュニケーションの受け手側が、コミュニケーションのきっかけを作り、さらにイニシアティブを持つ事もあります。
介護職が仕事の上で行うコミュニケーションは、介護サービスの提供を行う場面では、意識的に利用者とコミュニケーションを図る事が必要とされます。利用者にとっては、介護サービスを受けることは、日常生活の中の一場面と考えられ、自然なコミュニケーションが図られることになります。介護職にとっては、介護サービスの提供という仕事の場面となり、介護の専門家として介護サービスの提供に必要な利用者のことを知るために、コミュニケーションを意識的、意図的に行う事にになります。
介護サービスの提供場面では、介護職は専らコミュニケーションの受け手として振る舞うことになり、利用者がコミュニケーションの送り手となります。コミュニケーションのきっかけは、利用者の個性や生活環境にもよりますが、利用者の側から自然なコミュニケーションが始まったり、介護職が介護サービスを提供するための必要性から、意図的にコミュニケーションを始めることもあります。
介護サービスの提供場面では、介護サービスの提供を行いながら、限られた時間の中でコミュニケーションを図らなければならない事もあり、介護職がイニシアティブを取らざるを得ないと思われます。コミュニケーション能力のトレーニングを積むことで、介護職がイニシアティブを取っている事を利用者に意識させない、自然な形でのコミュニケーションを行いながらも、介護サービスを提供するために必要なことを得られる事が望まれます。