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認知症の鑑別診断で中心となるのは神経心理検査による診断で画像診断は補助的診断

認知症の鑑別診断は、既往歴、現症、身体所見、ADL、神経心理検査、血液検査、画像検査などを行うことで、認知症の有無、原因疾患、重症度などを鑑別するために行われます。

認知症の状態を評価する神経心理検査としては、1)初診時に認知症かそうでないかを判別するスクリーニングのためのもの、2)診断確定後、認知症の進行度、重症度、治療薬の効果を評価するためのもの、3)多様な認知症の鑑別診断の補助を目的にしたものがあります。

認知症のスクリーニングのための神経心理検査としては、MMSE(mini-mental state examination)が世界的にも広く用いられている検査となっています。MMSEは、総得点が30点で、見当識、記銘力、注意・計算、言語機能、口頭命令動作、図形模写などの複数の認知機能を評価できるもので、一般に23点以下を≪認知症の疑いあり≫とする判定が用いられます。

その他に認知症のスクリーニングのための神経心理検査には、わが国では広く用いられている①改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R:30点満点で、21点以上を正常域、20点以下を認知症の疑いとみなす)や②時計描画テスト(CDT)、③7MS(The Seven Minutes Screen)、④N式精神機能検査などがあり、MMSEだけでなく、複数の検査を組み合わせて実施することが推奨されています。

認知症の中核症状のうちで必須の症状と言える記銘力障害を評価する記憶機能の評価尺度には、①Wechsler記憶検査改訂版(WMS-R)、②日本語版Rivermead行動記憶検査(RMMT)、③聴覚性言語性学習検査(AVLT)などがあります。

認知症の行動・心理症状(BPSD)を評価する尺度としては、①NPI、②Behave-AD、③CMAIなどがあります。NPIでは、Ⅰ.妄想、Ⅱ.幻覚、Ⅲ.興奮、Ⅳ.うつ症状、Ⅴ.不安、Ⅵ.多幸、Ⅶ.無為、Ⅷ.脱抑制、Ⅸ.易刺激性、Ⅹ.異常行動の10項目の精神徴候を評価します。NPIには、介護不可の評価が加わるNPI-D、施設入所者用のNPI-NH、質問紙を用いるNPI-Qなどのバージョンが作成されています。

認知症のADLの評価尺度には、①PSMS/IADL、②N式老年者用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)、③認知症のための障害評価票(DAD)、④ADCS-ADLなどがあります。

認知症の全般的重症度を評価する尺度には、①COGNISTAT(覚醒水準、見当識、記憶、言語などを多面的に評価)、②CDR、③FAST、④N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)、⑤RBANSなどがあります。

神経心理検査以外の認知症補助診断としては、血液検査、脳脊髄液検査、画像検査などがあります。血液検査は、認知症および認知症様症状をきたす内科疾患との鑑別に重要とされています。赤血球数、電解質、血糖、尿素窒素/クレアチニン、葉酸、ビタミンB1、ビタミンB12、甲状腺ホルモンのチェックは、治療可能な認知症の診断に有用とされています。

脳脊髄液検査は、慢性の髄膜脳炎などの頭蓋内疾患の鑑別に有用で、画像検査には、CT、MRI、MRA、SPECT、PETなどがあります。CT、MRI、MRAは、脳血管障害、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍などによる認知様症状をきたす疾患の鑑別に有用とされています。また、アルツハイマー病の補助診断として、MRI、脳血流SPECT、PETによる評価が推奨されています。

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