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-特発性正常圧水頭症-原因疾患が特定出来ない60歳以上の高齢者に起きる正常圧水頭症

特発性正常圧水頭症(iNPH)とは、60歳以上の高齢者に起きる正常圧水頭症で、原因疾患が特定出来ないにもかかわらず脳室の拡大が認められて、iNPHの三徴候と言われる①認知障害、②歩行障害、③排尿障害といった症状が進行する疾病であります。

≪iNPHの症状≫

●認知障害:物忘れ、自発性の低下、無関心、思考や日常動作の緩慢化、無言無動など

●歩行障害:歩幅の減少(小刻みな歩き方)、足の挙上低下、歩幅の拡大(両脚を開脚した歩き方)、歩行速度の低下、足が前に出にくい、起立時・方向転換時の不安定など

●排尿障害:頻尿、切迫性尿失禁など

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<図1>特発性正常圧水頭症診断ガイドラインの診断基準(改訂版)

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<図2>iNPH診療のための診断基準およびフローチャート

iNPHは、治療可能な認知症(treatable dementia)として知られており、早期診断・早期治療によりシャント手術(脳室-腹腔シャント:V-Pシャント、腰部くも膜下腔-腹腔シャント:L-Pシャント)を行うことによって、認知症症状の軽減を図ることが可能となります。三徴候のうち最も症状が改善しやすいのが歩行障害で、次いで排尿障害、認知障害は最も遅れて改善されると言われています。

iNPHが疑われる人の有病率は、65歳以上の高齢者の0.51~2.9%であると推定されています。人口10万人あたりでは、約250人が罹患している可能性があると考えられます。

老年期認知症研究会誌 Vol.19 No.1 2012に載せられた「特発性正常圧水頭症(iNPH)-その診断と治療の最前線-」貝嶋光信・著の結語に、「iNPHは基本的に高齢者の疾患である。平均寿命近くまで生きてきた人に、全身麻酔下に1時間の手術を行う目的は何だろうと自問自答しながら診療を行っている。患者のADLが改善し、患者本人や介護する人たちのQOLが向上することこそが最大の目的である。『もう一度輝いて頂きたい』、そういう思いを込めて診療に当たっている」という文言は、高齢者にかかわる専門職にとって心に留め置かなければならない文言だと思いました。

出典:<図1>・<図2>難病情報センターホームページ(2014,10.1現在)から引用

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