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アルツハイマー病と類似点が多いものの甲状腺機能低下症は治療可能な認知症

≪甲状腺機能低下症≫

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足により全般的な代謝が低下する疾病で、発症頻度が比較的高く、65歳以上の女性の10%、男性の6%近くに認められるとされています。高齢者の場合には、進行が緩徐であったり、典型症状が見られないことが多いために、加齢に伴う生理的老化と間違われることもあるとされています。

甲状腺機能低下症の症状は、身体症状以外に表情に乏しく抑うつ状態、うつ病や認知症症状が見られることもあります。認知症症状は、アルツハイマー病と類似点が多く、記銘力や集中力・応答性の低下が目立つという特徴があります。

<甲状腺機能低下症の症状>

●易疲労感

●耐寒能低下

●顔面・眼瞼の浮腫

●皮膚乾燥

●体重増加

●体毛の脱毛

●嗄声(しわがれた声)

●便秘

●嗜眠

●筋力低下

●記銘力低下

●無気力・意欲低下

●動作緩慢

など

甲状腺機能低下症の認知症は、治療可能な認知症とされていますが、甲状腺機能低下症の早期診断、早期治療が行われなければ、不可逆的な認知症に至ることを防ぐことは困難であるという報告などから、甲状腺機能低下症による認知症は、必ずしも治療可能とは言える状況には無いという見解も示されています。

甲状腺機能低下症に年間約2~5%の率で移行するとされる疾病に、潜在性甲状腺機能低下症があります。潜在性甲状腺機能低下症は、一般人口の4~10%、高齢者では7~25%に存在するとされています。

≪橋本脳症≫

甲状腺機能異常症には、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、橋本甲状腺炎(橋本病)があります。甲状腺機能低下症・亢進症は、いずれも甲状腺ホルモンの分泌に異常が見られる疾病です。橋本甲状腺炎は、甲状腺に慢性の炎症が起きている自己免疫疾患で、潜在性のものを含めると日本人の3~5%が罹患する疾病となっています。

橋本甲状腺炎には、甲状腺機能低下に伴う粘液水腫性脳症が知られていましたが、甲状腺機能異常が原因では無い自己免疫の異常による脳症が確認されて、橋本脳症と呼ばれています。

橋本脳症は、①急性の意識障害や精神症状が見られる【急性脳症型】、②慢性にうつや統合失調様の精神症状が見られる【精神病型】、③小脳失調を主症状とする【小脳失調型】などに分類されています。

<橋本脳症の症状>

●意識障害

●精神症状:不穏・せん妄、幻覚・妄想、うつ・不安、無気力

●認知症症状:知能低下、記憶力障害、見当識障害

など

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