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-記銘力低下-記銘力低下は脳の機能低下より、情動(感情)や心身の状態が影響するので脳トレーニングよりも大切なことがある?

記憶の過程には、≪記銘≫、≪保持≫、≪想起≫という過程があり、≪記銘≫の過程で情報や操作などを記憶として覚え込み、≪保持≫で記憶を保ち、≪想起≫で記憶を呼び起こします。それぞれの過程は、不連続のように思われますが、≪保持≫の過程に長短が記憶によって見られるものの、≪保持≫をはさんで記憶するための≪記銘≫と記憶を活用する≪想起≫が行われなければ、記憶としては成立しない事は明らかであり、ひとつの記憶には、3つの過程が連なっていると考えることが出来ます。

≪記銘≫とは、記憶の入口、取り掛かりで、情報や操作などを記憶として覚え込む作業で、コンピューターにたとえれば、目や手、耳などの器官などによって入力された情報が脳に伝えられることで、その情報を脳に受け入れ、受け止めさせることと考えられます。そして、脳に伝えられた情報は、≪保持≫機能によって保管され、≪想起≫機能によって活用されることになります。

記銘力低下は、新しい情報や操作などを、記憶として覚え込むことが難しくなるもので、記銘力の低下は、脳の生理的老化に大きく影響されると考えられます。脳の生理的老化だけでなく、脳に情報を伝える神経系や脳から効果器へ情報を伝える神経系の生理的老化にも左右されることが考えられ、ヒトの脳神経系の生理的老化や脳神経系の働き具合によって、記銘力低下は左右されることになります。

脳の生理的老化は、大脳皮質については、萎縮が層構造を保ちながらも全般的に生じます。脳の病的老化は、萎縮が病的部位に特異的に生じるものとなります。脳の機能の低下は、生理的老化においては、脳の萎縮が生じてもゆるやかに、また、脳神経系の補償作用によって、ある程度の機能低下を防止することが可能となります。

脳の記銘をするための機能が保持されたとしても、脳に情報が伝えられることが出来なければ、記銘すら出来なくなってしまう。記銘力の低下は、脳の記銘機能の低下だけでなく、脳への情報伝達機能が低下することで生じることがあり、高齢者の場合には脳の機能低下よりも、脳への情報伝達機能の低下に大きく影響されると考えられます。

脳への情報伝達機能の低下を補償するために、ヒトは経験に基づいて様々な方法を、高齢者に限らず複線的に用いることで記銘を確実にして、保持につなげようと試みます。新しい情報を脳に記銘させて、脳に保持させるためには、情報を確実に効果的に認知することで、脳に伝えて保持がされやすくするために、文字を目で見るだけでなく、言葉に発して耳からも情報を得たり、言葉を耳から聞くだけで無く、文字にすることで目からも情報を得るなどの複数の行為を行うことで記銘力を維持しようとします。

ヒトの脳が記憶として新しい情報を記銘することは、知りたい、覚えたいという前向きな思いや、知らなければならない、覚えなくてはならないという後ろ向きな思いを持ちながら行われるものであります。高齢者に限らず興味を持って、知ることや覚えることがることが、必要性の有無、興味の有無、前向きか後ろ向きかによって、記銘に影響を及ぼすと考えられます。

高齢者の日常生活に於いては、安定した変化に乏しい生活環境や生活習慣の中で過ごすことになり、たとえ変化があったとしても、それまでの経験によって対処が可能であったり、敢えて新しい情報や操作などを覚えなくとも、支障が少ないと考えられがちであります。

加齢による生理的老化によって、ヒトの余力は心身機能の全般にわたって少なくなってしまい、健康維持、身体機能の維持に手一杯で、意識・無意識のうちに手間のかかること、新たに取り組まなくてはならないことを回避する行動を取るようになります。

ヒトは感情の動物であると言われるとおり、感情(情動)に行動が左右されることは明らかで、記銘力低下にも脳の記銘機能の状態だけでなく、情動によっても左右されると考えられます。記銘力にも情動が大きく影響していると考えられ、情動と同様に心身の状況に、記銘力は大きく左右されると言えます。

記銘力低下を防ぐには、生理的老化によって少なくなった余力を、健康維持、身体機能の維持にいかに費やさないようにするかにあります。ヒトは様々な脳内物質や神経伝達物質によって、心身の機能が包括的にコントロールされていると考えられることから、ホメオスタシスを維持し、余力を保ちながらもこころの機能を働かせて心身の機能を安定させることが、記銘力低下を防ぐには必要となります。

心身の状況が安定することで、日常生活と健康状態の安定をはかりながら、前向きな良い情動を働かせる生活環境、生活習慣を心がける必要があります。それには、高齢者が【やりたい】こと、【やれる】こと、【やっている】ことを確かめて、【やれる】ことを増やして行き、前向きな気持ちを持ち続けながら、【やりたい】ことへの取り組みにつなげて行くことが、≪記銘≫だけでなく、記憶の≪保持≫や≪想起≫の機能の低下予防、維持につながると考えられます。

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