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記憶機能の変化ではワーキングメモリー(作業記憶)の老化が最も顕著に見られます

ヒトには「三つの動物の脳」があると言われおり、【は虫類の脳】とは、脳幹のことで、呼吸、体温、ホルモンなどの生命維持をする脳。【ウマの脳】とは、大脳辺縁系のことで、感情(喜怒哀楽)を司る脳。【ヒトの脳】とは、大脳皮質のことで、知覚、運動、言語、記憶、思考を司る脳と言われています。

記憶には、≪①顕在記憶≫と≪②潜在記憶≫という、記憶の想起(思い出し方)と言語化の難易による分類や、≪A.陳述記憶≫と≪B.手続き記憶≫という、記憶を保持(憶える、憶えている)する方法での分類、≪Ⅰ.展望的記憶≫と≪Ⅱ.回想的記憶≫という、日常生活の記憶活動による分類などがあります。

記憶の想起と言語化の難易による分類のうち、≪①顕在記憶(宣言的記憶)≫は、思い出そうという意図を伴う、あるいは思い出したことを言語化できる記憶で、【①-1エピソード記憶】、【①-2自伝的記憶】、【①-3意味記憶】の三つが含まれます。

【①-1エピソード記憶】⇒海馬:いつ<時間>、どこで<場所>という情報を伴った記憶

【①-2自伝的記憶】⇒海馬:個人的な生活史

【①-3意味記憶】⇒側頭・頭頂連合野:事実や概念に関する知識

≪②潜在記憶(非宣言的記憶)≫は、思い出そうという意図を伴わない、あるいは言語化できない(しにくい)記憶です。

記憶の想起と言語化の難易によって分類される記憶の老化は、【エピソード記憶】、【意味記憶】、≪潜在記憶≫の順に見られます。【自伝的記憶】は、比較的最近のものについては、低下が見られるものの、過去のものについては良く保持されていると言われています。

記憶を保持する方法での分類のうち、≪A.陳述記憶≫は、頭で憶える記憶で、【A-1即時記憶】と【A-2長期記憶】があります。また、【A-2長期記憶】には、[A-2-1近時記憶]と[A-2-2遠隔記憶:年単位という長さで保持される(大脳皮質)]があります。

≪A.陳述記憶≫

【A-1即時記憶】:数秒程度の短時間の記憶

【A-2長期記憶】:即時記憶の保持

[A-2-1近時記憶]⇒海馬:数分から数日、数週程度の記憶

[A-2-2遠隔記憶]⇒大脳皮質:年単位という長さで保持される記憶

≪B.手続き記憶≫は、手続き、使い方など運動技能学習の基盤になる身体で覚える記憶で大脳基底核・小脳が担っています。

記憶を保持する方法によって分類される記憶の老化は、≪陳述記憶≫の方が、≪手続き記憶≫より低下が見られます。また、陳述記憶では、[近時記憶]、[遠隔記憶]、【即時記憶】の順に低下が見られます。

記憶の中で、加齢による影響が少ないものは、【①-3意味記憶】、≪B.手続き記憶≫とされています。

日常生活の記憶活動による分類では、≪Ⅰ.展望的記憶≫は、未来に遂行する課題や予定などを記憶して、タイミング良く記憶を想起して遂行するための記憶で、≪Ⅱ.回想的記憶≫は、過去に行ったことを思い出す記憶となります。

日常生活の中での記憶機能として重要なものは、≪展望的記憶≫と考えられます。「●●し忘れ」は、展望記憶の失敗となります。展望記憶は、日常生活の中で物事を円滑に進めるためには、重要な役割を持っていると考えられます。高齢者にとっては、自立状態を維持するために大きな影響を持つ記憶能力のひとつであると共に、展望記憶の生理的老化は、老性自覚のきっかけになると考えられます。

日常生活の中での記憶機能として、展望的記憶と同様に重要と考えられる機能に、≪ワーキングメモリー(作業記憶)≫があります。ワーキングメモリーは、【即時記憶】や【近時記憶】などとは異なり、情報を保持しながら情報処理も行うものであります。

ワーキングメモリーは、脳のあちこちにファイルされている情報をかき集めて、一時的に保存します。そして集めた情報を組み合わせたり、ばらばらにしたりして、「これからどうするか」といったことを検討する場所です。ワーキングメモリーが行う作業は、「黒板」いろいろな情報を書き並べながら検討している様に思われ、自己選択、自己判断、自己決定をするための黒板であると考えられます。

ワーキングメモリは、加齢に共なう生理的老化によって、明らかな低下が認められます。また、病的老化による認知症でも見られると言われています。

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