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咀嚼機能と唾液分泌機能の老化は栄養状態だけでなく脳の状態にも影響があります

咀嚼機能は、咀嚼筋の収縮による顎運動を行うことで、上下の歯列間にある食物を切断・破砕・粉砕して、口唇、頬、舌の作用や運動で唾液と混和しながら食塊を形成し、嚥下動作に入るまでの過程です。

咀嚼の過程には、歯、咀嚼筋、顎関節、舌、表情筋、口唇などがかかわっています。咀嚼筋、舌、表情筋などが行う咀嚼の協調運動は、食物の量や性質、口腔内の位置などを口腔内の感覚器より検知して、脳幹での反射と運動中枢からの制御でコントロールされます。

咀嚼機能は、①消化吸収を助ける、②唾液の分泌を促す、③食物から味覚誘引物質を引き出し食欲増進を図る、④頭・顎の骨、歯ぐきの健康を維持する、⑤脳の運動野と感覚野などへの血流の増加により脳に刺激を与える、⑥咀嚼にかかわる筋肉の衰えを防止する、⑦姿勢を整える、⑧ストレスを解消するという役割を持っています。また、高齢者では脳の連合野が特に活性化することがわかって来ています。

加齢に伴う生理的な老化として、咀嚼筋力の低下、舌運動機能の低下、口唇機能の低下などが生じると言われています。また、加齢に伴って咬耗してゆく歯の咬合面の形態は、咀嚼の進行に伴う食物の舌側への移動の遅れと、粉砕程度の低下に影響を及ぼしていると考えられています。

咀嚼能力は、加齢に伴う生理的老化よりも、歯の喪失や唾液分泌の減少などによる、生理的・病的老化に大きく影響を受けると考えられます。また、咀嚼力は加齢に伴って、若年者の3分の1から10分の1に低下し、特に前歯の噛み切る力が弱くなると言われています。前歯の欠損は、噛み切る事が出来なくなり、奥歯の欠損は、噛み砕く事が出来なくなります。

歯の欠損と咀嚼力の低下は、奥歯1本の減少で、健常者の約65%に減少し、ブリッジ装着で70~80%に、部分入れ歯で30~40%、総入れ歯では10~20%に低下するとされています。

唾液分泌機能は、加齢に伴う生理的老化によって、分泌量が若年者のおよそ半分になり、粘調度が高くなります。唾液の分泌量の低下によって、口腔内の浄化作用の低下が生じてしまい、味覚障害や食欲不振、口臭などの原因となります。

唾液の役割としては、①消化吸収を助ける、②口腔内の乾燥防止、③殺菌作用による口腔内自浄、④歯の再石灰化、⑤組織修復、⑥粘膜保護、⑦発がん予防などの作用を行っています。唾液分泌機能は、咀嚼機能と共に、健康維持や老化予防に、非常に重要な役割を持っていると考えられます。。

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