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介護を受けることはQOLを上げたり下げたりします

介護職は、介護サービス、支援を提供しながら、利用者に最も身近な専門職者として接することになります。利用者の尊厳の保持やエンパワメントの達成、QOLの評価など、一人のひとの日常生活、人生に大きな影響を与える存在となります。この事をケアマネジメントにおけるチームアプローチを行う中で、重要な社会資源となる専門職の一人として、常に心に留め置いておかなければなりません。

健康関連QOLとADLとの関係は、医療分野ではADLがQOLの指標として重要視され、QOLにはADLが大きくかかわっていて、QOLを高めるにはADLの自立度を高める事だと考えられていました。現在では、QOLとADLとの関連性が強いとは、以前ほどには考えられなくなっていますが、日常的にサービス、支援を提供する介護職としては、利用者のQOLとADLの状態、変化には常に関心を持っていなくてはなりません。

山梨医大医学部付属病院で、入院患者と通院患者に対するQOLとADLとの関係について、1999年に調査研究が行われました。この研究の紀要の中に介護とQOLと支援者に関する興味深い考察が見られました。

高齢者の発達段階とされる老年期において、「老年期の健康障害には心身の相関が著しい」と考えられるとしています。そして、「高齢者に健康障害がおこったとき、そのADLレベルが高齢者のQOL、すなわち主観的幸福感に大きな影響を及ぼす」という事を前提にして調査が行われました。

老年期に限らずヒトの「こころ」と「からだ」とは密接につながりあっていて、互いに影響し合っており、ホメオスタシスの維持には、「こころ」と「からだ」のバランスが取れていることが、とても大切だと言われています。加齢に伴う老化によって、心身共に機能の低下を認知し、健康が損なわれがちな高齢者には、健康障害による心身両方への影響は、他の時期に比べれば大きいと考えられます。

高齢者に健康障害が生じれば、ADLレベルの変化(低下)は当然避ける事が困難なもので、それに従ってQOLも影響を及ぼす事が考えられます。

調査は面接によって行われ、「起居」、「食事」、「排泄」、「更衣」、「整容」、「移動」のADL項目(因子)と、「性別」、「年齢」などのその他の項目(因子)について分析、考察が行われました。そして、「更衣」のADLが低い場合にQOLが高いという結果と、「食事」のADLが高い場合にQOLが高いという結果が結論づけられました。

「更衣」の因子では、結果について「医療関係者との対人関係が影響している」と考察されました。また、「食事」の因子には、「食事をするという行為が独力ででき,かつ家族等と共に食事ができることが,直接的に日常生活の中に喜びや楽しみという快の感覚をもたらし,生活満足感を高くした」と考察しています。

ADLレベルが高ければQOLが高いと考えがちですが、必ずしもそうではないという結果が見られ、特に医療関係者との対人関係(看護・介護場面)が影響しているという考察は、介護におけるサービス、支援を行う専門職としては注目に値するものであり、介護における介護職がQOLに大きく影響を与える事を示唆しています。

参考文献:山梨医大紀要第16巻,71-75(1999)/高齢患者のQOL とADL(日常生活動作)との関係
http://www.lib.yamanashi.ac.jp/igaku/mokuji/kiyou/kiyou16/image/kiyou16–023to027.pdf



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