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老人ホームマップ > あなたがご意見番

問

「実際のところ、あなたの知っている施設は入居者の希望を聞き入れてくれますか?」調査結果(調査期間: 2006/12/19 ~2006/12/26)

「少し難しい要求でも聞き届けてもらえました」「水分摂取に関して希望を述べただけで激怒されました」 施設によって対応に差が出る昨今。あなたの施設はどうでしょう?

結論

 今回の【あなたがご意見番!!】では、施設で直接関わり合いになる介護施設が「入居者の希望を聞き入れてくれるかどうか」をテーマに、皆様のご意見をお伺いしました。このようなテーマを設定したのは、老人ホームマップに次のようなクチコミが寄せられたためです。

 

要望を口にしたときの施設側の反応

「少し難しい要求だったのですが、快く聞き入れてもらえました」
「水分摂取に関して希望を述べただけで激怒されます」

 施設側が被介護者に合った介護を考慮してくれるかどうかは、預ける側にとっては最も重要な問題の一つです(いわんや本人においてをや)。人生のフィナーレの時期に差し掛かったとき、無事に安心した生活を過ごすことができるか……
  人生の後味。それが決まる問題でもあります。
  ではさっそく、調査結果の報告に参りましょう。利用者から見た、施設側の対応の良し悪し。それが浮き彫りになります。


1.結果報告


はい  
 
   
 
  いいえ
77%
     
23%

入居者の希望を聞き入れてくれる:77%

 施設が入居者の希望を聞き入れてくれると答えたのは全体の76%の方々です。前回の調査と比較すると、格段に良い結果を得ることが出来ました! 割合としては大部分の施設が施設利用者への配慮を示し、またそれが利用者側にも伝わっているということです。
  また、寄せられたご意見の中には、施設への安心感、感謝といったものも複数見受けられ、厳しいと言われる高齢者介護の現状にあってとてもポジティブな印象を抱くことのできる結果だと思います。利用者が気にする様々な観点も明らかになっていますね。

 

入居者の希望を聞き入れてくれない:23%

 施設が入居者の希望を聞き入れてくれないと答えたのは全体の24%の方々です。割合としては少なく出た結果とはいえ、24%。ご意見を仔細に眺めていくと、様々な問題意識、問題点が提起されています。
  今回の調査は施設に対して行ったものではなく、施設利用者の方々へ向けて行ったものでした。なので、この調査によって明らかになるのは、「施設が施設利用者の希望を聞き入れる体制を取っているかどうか」ではなく、「利用者が、施設側から利用者への配慮を感じ取ることができるかどうか」です。その意味では、以下で見ていくそれぞれのご意見の、不満の持ち方、を参照することがとても重要であると言えるかもしれません。


2.あなたがご意見番!


 

聞き入れてもらえた!

「じょくそうができたので清こまめに寝返りをうたせてもらったり、清拭や風呂に入れてもらう回数を増やしてもらい、また訪問看護士に手当てをしてもらう手続きもとってくれて、ひどくならずに完治した。」(53 歳 女性)
「本人が要求するもの(納豆、梅干、ヨーグルトなど)を快く購入してくれるし、こちらが持参したものも保管して本人に出してくれるので助かっている。」(58 歳 女性)
「アルツハイマーで徘徊するが、ストレス軽減のためにもなるべく歩き回るときは危険がない範囲でさせてくれるようお願いしたところ、部屋に閉じ込めることなく付き添って歩き回らせてくれる。」(51 歳 女性)

[hirano]ひとりひとりの好みや症状への丁寧な対応、とても嬉しくなるご意見です!

 

信頼感を抱いている

「ここはおうちみたいなものなんですから、ご自由にしていいですととてもていねいに対応してくれほっとしました。」(52 歳 女性)
「施設の従業員(ヘルパーさん?)の皆さんが親切で、入居している親も安心して過ごせており「自宅より快適」と申す位です。」(60 歳 男性)
「こちらの具体的な希望に沿えることと添えないことを、きちんと理由とその背景を説明してくださる、そのような点でよく対応してくださっていると感じています。」(53 歳 男性)

[hirano]施設の方の熱心な気持ちが伝わってくるなと思いました。心が温かくなるお話ですね。
[matuda]しっかりと、「納得を提供する」という姿勢がとても大事です。

 

施設からの嬉しい対応

「義父はどちらかというと元気なほうで食欲もあるので、ご飯の量が少なくてすぐにお腹が空くということで職員の方に話したところ、快く聞いてくれて、「わかりました、話しておきますね。あとは何かご要望はありませんか?気がついたときにでもいつでも電話でもいいですので連絡ください」と言ってくれて助かっています。」(47 歳 女性)
「40年間サツキを育てています。その旨施設のほうへ話しましたら、「施設の庭へ置いて、水遣りや世話をおじいさんの仕事にすればいいじゃないですか」といっていただき感謝しております。」(52 歳 女性)

[hirano]細かなことに本当に細かく対応していることが伺えるご意見が多く、良い意味で驚くことが多いです。本当に嬉しいですね。
[matuda]このほかにもたくさんのメッセージが見られました。施設の頑張りが感じられます!

 

食事について

「利用者や利用者の家族の話を良く聞いて、可能な限り希望を叶えてくれようとする姿勢が良くわかる。食事の面で、おかずをきざみにしてくれたり、おにぎりやおかゆにもしてくれたり、お茶も熱いお茶とつめたいお茶が選べたり、牛乳も希望すればホットにもしてくれる。また薬を飲む白湯もお茶とは別に用意してくれる。水分補給もかなり気配りが聞いている。」(61 歳 女性)
「食事については嫌いなものは指定しておくと避けてくれる。味については、栄養士が直接本人に聞いて歩く。こちらで言わなくても状態によって刻みなど堅さを替えてくれる。」(44 歳 男性)
「ホームでの、昼食・夕食には、1~2週間に1度は「鯖」を使ったメニューがでるが、「鯖」が嫌いなことを言うと違う魚にかえてだしてくれる。」(55 歳 女性)

[matuda]皆様から寄せられたご意見の中でも、とりわけ「食事」について述べられているものの多さが目に付きます。やっぱり食事は大事ですよね!

 

聞き入れてもらえなかった

「義母は電気がついていないと眠れないのですが、その旨を言うと、電気代の関係もあり、そういう要望には応えられないとのこと。少し残念でした。」(50 歳 女性)
「原則として、希望は聞けないとの事でした。その理由は、人手が足りない、普段から十分人手があれば、一人一人にあった生活を支援できればよいのですが。それには費用が掛かりすぎますし、そこまで献身的に仕事をする人手がたりません。」(59 歳 男性)
「食事の好き嫌いを事前にお伝えしたが、個別の対応は難しいと言われた。」(57 歳 男性)
「母は股関節の骨折で、金属間接を入れていて、腰の負担と歩行に不安を覚えていて、入施検査で判っているのに、常人と同じ運動メニューを強要された。」(50 歳 男性)

[matuda]人手の問題、金銭的問題などにより対応できないという事情が寄せられました。経営の苦しい施設が多く、それが残念な結果となって表れていますね・・。
[hirano]施設の方としても心苦しい状況なのかもしれませんね。非常に難しい問題です。

 

不満がある

「入所者の大半の人は車椅子にたよっており、本来の目的である、「その施設でリハビリ指導をうけ、体力向上をはかり、ステイを依頼しなくてもいい状態にまで回復させる」との目標ときいているが、その点からみると、常時車椅子で管理しているというのは、その精神からみると、大きく後退しているといわざるを得ない。」(68 歳 男性)

[matuda]施設理念と実態との食い違い、というところには、施設利用者の方々は敏感に反応なされます。

 

不信感を抱いている

「お菓子などは、本人に渡すと嫌な顔をされるので、預けてきますが、半分も渡らないと思ってます。何か希望を言っても、後で嫌な思いをするかも知れないので、言った事はありません。」(61 歳 女性)
「美容室、洋服代、お菓子代、家具、家電など…。本当に必要なの?と思うようなものの請求が、増えているので、少し心配です。」(52 歳 女性)
「資金難を理由に病院で投薬していた薬をカットされた。」(58 歳 男性)
「軽いアルツハイマーと軽いパーキンソンになった米寿を過ぎた男でたまに徘徊すると断られ、別の施設に入居したらそんな症状はないと言われた。扱いによっては異なる症状が出るのかもしれない」(65 歳 男性)

[matuda]今回、全体の割合的には少ないとはいえ、不信感を表明されている方は多数いらっしゃいました。こうした意見を見ると、“割合で結果の良し悪しを判断できるわけではない”ということに気づかされます。
[hirano]前述の「聞き入れてもらえた!」の“徘徊”についての対応と比べてみるだけでも施設ごとの大きな違いが伺えますね。

 

施設からの嫌がらせ

「ほかの入居者の方が食事のことを言うとその人の食器はかたずけないでずっとそのままでした。ほかのヘルパーさんがかたずけていました。きっと私が来ないとき、親が希望を述べたりすると、そういう仕打ちをされるのかと納得しました。」(53 歳 女性)
「介護老人施設夜間は人手が少ない為か面倒を掛けると後で小言をいわれる」(51 歳 男性)

[hirano]あるまじき話です。このような話が少しでもある限り、今回の Yes 多数の結果は喜ばしい結果とは言えません。

 

難しさを感じる

「現在は、良く対応してくれていますが、基本的には、どちらとも言えないと言うところです。それは、その時の担当者によるからです。ホームでは、担当が系列の他の施設へ移動したり、止めたりして、担当が変わることが多いのです。良い人に当たれば、良いが、そうでない場合もあります。実際に、どなられたこともあるようです。施設全体としては、良く対応していると思われますが、隅々までは、難しそうです。そうでない場合に、施設長に訴えることもできますが、度々では、疲れてしまいます。」(57 歳 男性)
「認知症向けの施設に入っているので、親のいうことと、スタッフのいうことと食い違う場合、どちらが本当か判断に迷うことがある」(50 歳 女性)
「施設によって違うというより、そこの方針とかそこのトップの人の影響も含めと担当者次第だと思います。特にその担当者がそこに勤めるまでどんな環境で育ってきたかが大きく反映していると思います。その担当者に周りの人がどんな影響を与えてきたかが大きく左右している感がとても強く感じました。」(51 歳 女性)
「要望しにくい」(50 歳 男性)

[hirano]今回お寄せいただいたご意見からも判断できる通り、良い対応も悪い対応も両極端で存在します。また、施設職員の方も人であるため、必ず最高の対応が出来るとは限りません。この「あなたがご意見番!」のコンテンツが少しでもこういった状況を打破できる存在にしていけると良いなと思います!

 

制度的問題

「2年で別の施設に移動しなければならないようです。」(63 歳 男性)
「施設利用もショートステイの利用のみで、食事のことより、病気発症の時の対応しか打ち合わせてない。」(59 歳 男性)
「とてもサービスが行き届いてはいるが、少しの発熱などでも大事を取り過ぎて、即、入院させるなどが多いのでもう少し、独自の判断で病状を見極めて欲しい。」(55 歳 女性)

[matuda]“制度上自然と生じてくる問題”というのもあるようです。

 

コミュニケーションの問題

「本人の希望と介護者(家族)の希望が違った場合本人の希望が優先されました。人との関わりが下手で嫌いなので出来るだけ入所者と関わる状況を作って欲しいとお願いしたのですが、本人の希望で食事以外は部屋から出ない状況におります。」(65 歳 女性)
「その日の担当者によって対応が違います。もともとの人間性によります。」(42 歳 男性)
「とりあえず、色々なチェック機関からの審査が入っているようで、大きな問題はないが、こちらが頼んだことに対して、職員相互間の連絡は、うまくいっているように思えない。また職員の資質により、いやな思いを受けることもある。だからお願いするときは職員を選ぶ。」(54 歳 男性)

[matuda]コミュニケーションの問題が提起されています。それも多岐の場面に渡るものです。

 

信念

「正直、施設には希望を言った者勝です。本人もその保護者もどんどん言ったほうが良いです。特に長年やっている介護士には特に。」(51 歳 男性)
「要望を聞いてもらうには、親の状況を十分に説明し、歯が悪いことをちゃんと見せて、ご飯をおかゆにしてもらいました。」(50 歳 男性)

[hirano]まず積極的に、こうであった方が嬉しい!こうでないと本当に困るのだ!と、施設の方と交流をはかること、わかってもらうことが重要だと思います。行動は勇気が要ることですが、想いを伝えないと始まらないんです!

 


3.QOLという視点


「あとは何かご要望はありませんか? 気がついたときにでもいつでも電話でもいいですので連絡ください」

 入居者の希望を聞き入れてくれるということ。これが何を意味するのか。まず、皆様のご意見から浮かび上がってくる観点、あるいは問題意識を一覧してみましょう。

・「何かご要望はありませんか?」と言ってもらい、助かっている
・「要望には応えられない」と言われ、残念に思う
・食事を大事にする
・制度的問題意識
・施設におけるコミュニケーションの問題意識
・施設には意見を言うべき、という信念を持っている
・理念と実態との食い違いに不満を持つ
等等

 これらは、QOLという視点へと結びついてくるものです。


生活の質を大事に


 QOLとはクオリティ・オブ・ライフの頭文字を取った略語であり、日本語では「生活の質」とも呼ばれるものです。その主眼は、「外面的な充実度に終始するのではなく、むしろそのに着目し、中身、満足度を大事にしていこう!」というものです。QOLという考え方が日本で脚光を浴び始めたのは、医療の分野で行われたある種の反省がきっかけでした。

 

 ――――従来(といっても1970年代以前)、肢体不自由者の教育・福祉においてまず第一目標として掲げられたのは「日常生活動作の自立」「職業的自立」であり、それらの実現へ向けて多くのエネルギー(指導・訓練等)が注ぎ込まれていました。それ自体は素晴らしいことなのですが、ただその反面、「障害者のライフサイクル」「余暇活動を楽しむこと」「介助されながらも積極的に生きること」「生きていてよかったと思えること」などが“ないがしろにされてしまう”風潮が生まれてもいました。
  これで本当によいいのか。障害者の生涯にわたってこれでよいのか。もっと大切なことを忘れてはいないか。障害者のライフサイクルを考えた援助とは何か。生活の質、人生の質とは何か。
  それらを問い直すこと。即ち福祉の在り方を見直すこと。それが「QOLを大事にする」というスローガンとともに提起され、また、リハビリテーションの分野に限らない広範な意識改革として日本の中に浸透していきました。一般に、生活全体の質を大切にする社会は、1人ひとりの人間を大切にする社会であるとも言われるようになっています。

 

 昨今、高齢者介護についてもこの「QOL」「QOL向上」といったことが重視され始めています。

 

高齢者介護におけるQOL

  目標は、介護の現場にあって真に「満足のいく暮らし」を開拓すること、です。
  そのためにはまず「高齢者のQOLとは何か」が明らかでなければならないと考えられています。専門的には、「社会的役割の促進、創出をめぐる問題提起」「高齢者の幸福感を左右する心理・社会的要因の把握」「情緒的サポートのありかた」「死生観の調査」などが行われ、運動や療法の方法論についてもQOLの観点から模索されていますが、より身近なところでは、そもそも介護保険制度が高齢者介護においてQOL向上を目指したものだと解されています。『老人ホームマップの社会貢献ポリシーページ』でも紹介されているように、従来型の家庭での介護が実際問題としてはなかなか「満足のいく暮らし」を実現しないという反省から、介護サービスの地域整備等を射程に入れた「地域での介護へ」という方針転換を目標しました。
  高齢者本人の生活の質を大事にする。それを最も重要な目標として抱くこと。QOLというのは信念であり、これにより環境が改善されていくことが重要だということです。

 

 ところで、ここで一つ注意しなければならないのは、「QOL」と言ったときには二つの観点があるということです。
  すなわち、

① 生活者の意識面を中心に考える
② 生活者のおかれている環境状態について考える


 個々人の主観的な「QOL」を模索する試みは前者に属しますし、社会的整備やの方法論の導入検討等は後者に属します。上記二つが厳密に分かたれる観点だというわけでもありませんが、満足のいく暮らしを実現するための環境整備が、個々人の意識面においてそのまま満足のいく暮らしになる、というわけではないことは明らかです。(介護保険制度を施行することがそのまま各々の高齢者の方々の個別的な満足度を向上させるわけではない、ということは皆様ご存知の通りです。)
  “また、QOLを考える上で最も弁えておかなければならないことは、「高齢者」と一括りにして捉えたQOLが、必ずしも「高齢者ご本人」のQOLではないということです。”各々の方々の趣味嗜好によって、ご本人の考える「満足のいく暮らし」は異なるのですから。

 

 それでは結局のところ、高齢者の方々のQOLを大事にするために、私たちは何を気遣うべきでしょうか。

大事にするの第一歩

 振り返ってこの【あなたがご意見番!!】における皆様のご意見を鑑みるに、例えば「制度的問題意識」「施設におけるコミュニケーションの問題意識」というのは、環境についてのQOLを追求する視点であると思います。入居者ご本人のQOL向上を実現するための基礎的な困難を解消できればよい、という問題意識です。また、「施設には意見を言うべき、という信念を持っている」「理念と実態との食い違いに不満を持つ」ことは、QOL実現の可否を問題にする視点です。入居者本人のQOLを理解してもらわなければ話にならない。理念があっても、実態が追いついていなければ話にならない。そして、「「何かご要望はありませんか?」と言ってもらい、助かっている」「「要望には応えられない」と言われ、残念に思う」。これらはQOLそのものの充実度を示すご意見です。

 

 食事を大事にする方が多くいらっしゃったという結果が得られていますが、実際、QOL研究においても食事の重要性は強く指摘されています。そして、食事の嗜好は人によって大きく差異の出てくるところでもあります。
  QOLについて、原点であるところの「主観的な充実度」を満たすものは?
  この問いに対する答えは、傾向的には存在しますが、原則的には存在しません。上述の食事に関しても、「食事がQOLを向上する」のではなく、「個々人に応じた食事がQOL向上する」のであり、換言すれば「個々人に応じた」というこの部分がQOLの鍵だということです。

 

 QOLは施設の外面では決まりません。本人との関係によります。ならば、「その人にとってのQOLとは何なのか」。まずは、ご本人の希望を聞くこと。そして、施設が希望を聞き入れてくれるかどうかを確認すること。これが、自分の大切な人を大事にすることの第一歩です。


参考及び引用文献



森二三男、北守昭『高齢者のQOLに関する研究 -メンタル・ヘルス・ケアを中心に-』
清水哲郎『QOLの基礎理論』
山田 純子『発達障害指導辞典』学習研究社
松田智大『QOL測定の方法論と尺度の開発』