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老人ホームマップ > あなたがご意見番

問

「最近、介護施設ではスタッフの入れ替わりが頻繁だとか。あなたの知っている施設は多い?」調査結果(調査期間: 2006/12/04 ~2006/12/13)

「スタッフが頻繁に入れ替わるので本人が戸惑っている……」 顔なじみの人に介護してもらえると安心ですよね。あなたの施設は大丈夫ですか?

結論

―今回の【あなたがご意見番!!】では、施設で直接関わり合いになる介護スタッフの「入れ替わりの多寡」をテーマに、皆様のご意見をお伺いしました。このようなテーマを設定したのは、老人ホームマップに次のようなクチコミが寄せられたためです。

 

職員の入れ替わりが妙に多い

「職員の入れ替わりが多く、なかなか定着しないようです」
「職員がすぐに辞めてしまい、慣れた頃にはまた別の人の世話になるという感じ。老人にはそういう環境は辛いだろう」

 実際、介護者数の不足は頻繁に取り沙汰される問題です。「入れ替わり」もそれに類似する問題であり、根っこには「介護職員の労働環境」の実態が関係しています。
  この調査結果報告ページでは、まず介護職員の労働事情の一端を概観した上で皆様の意見を参照し、こうした問題に対する利用者側の感覚、関心、及び“皆様のご意見から見えてくる”打開の可能性を探っていこうと思います。

 みんなの声で日本の介護をよくしよう。
 そのために必要なことの一つが、私たち自身、問題を知るということです。


1.介護施設 介護職員の労働問題


背景事情

利用者自身の感覚として、施設の介護スタッフに入れ替わりが多いと感じるか否かは、勿論、ご自身の利用されている施設の実態によります。ゆとりを持った施設に接しているならば、不可解なスタッフ入れ替わり等は経験しないかもしれません。但し、介護職員の労働事情に関しては、既に一般論として次のような統計的調査結果が発表されています。

 

仕事に対する過重感=89.6%

自分の仕事について、過重だと感じている者の割合は、89.6%……9割近くにも上る。
  介護職員が自身の仕事に過重感を抱く理由としては、主に以下の要因が挙げられるようです。

「職員の絶対数が不足している」 …… 64.5%
「一人の職員で対応する利用者の数が多い」 …… 56.9%
「利用者の容体が急変するなど、常に緊張が強いられる」 …… 48.7%
「過重障害の利用者の対応など、困難な介護が増えている」 …… 65.4%
その他、「夜勤時の拘束時間が長い」、「夜勤の人数が少ない」、「有給休暇が取れない」、「育児休業が取れるようになっても、代替職員がいない」、「職員の交替が激しく、新任教育に手間がかかる」、「パート職員が多く、正職員に責任がのしかかる」・・・・・・

 

介護自体の困難さに加え、絶対数の不足、処遇比の偏重、緊張状態の持続といった事情が介護職員に過度の負担を強いていることがわかります。又、その他の項目において、「職員の交代が激しく……」「パート職員が多く……」といった表現が出てくるところから、“職員の入れ替わりが多い”ことへの問題意識が介護者側に存在していること、並びに職員の入れ替わりの多さが、現場で働いている職員の過重感へと繋がっているという現状がうかがえます。

 

バーンアウト傾向

――そうした職務上の負担の大きさは、バーンアウト傾向の強さ(=燃え尽き)として表れてくるものです。以下に挙げるデータは「バーンアウトした人によくみられる徴候を、介護職員がどの程度感じるか」ということを調査したものです。この統計データによって「介護職員はバーンアウトしやすい」と一概に論じられるわけではありませんが、介護職員の現状を理解する上での一つの参考にしてみてください。(なお、調査票で「よくある」「たまにある」と分けて回答されているところを、以下においては合併して掲載しています。)

 

「疲れやすい」 …… 92.7%
「仕事に対する意欲がなくなる」 …… 71.0%
「気が滅入る」 …… 72.9%
「うんざりした気分になる」 …… 68.5%
「気が弱くなる」 …… 56.8%
「精魂が尽き果てる」 …… 48.3%
「投げやりな気持ちになる」 …… 46.6%
「介護の仕事を辞めたくなる」 …… 49.7%

 

このような実態が、一方では職員の定着率の低さ(退職事情)として表れ、一方では介護サービスの質的低下として表れてくるのかもしれません。

 

(ところで、上記データ元の調査とは別に、施設長に「介護職員の仕事が過重であるか否か」を訊いたデータがあります。“その調査において「過重である」と答えた施設長は全体の66.7%。これは、介護職員における89.6%とは大きく隔たりのある数字です。”管理者と職員との認識の差は大きい、ということでしょうか……?)

 

職員自身が抱く「質的低下」の意識

「利用者ともっとゆっくり話をしたいが、それ以外の業務に追われ、なかなかそのような時間が取れない」
「職員研修・新人教育に割く手間がなかなか取れず、疎かになりかねない」

 

このような嘆きが全ての施設から漏れ聞こえてくるというわけではありません。ストレスについての統計でも、設置形態、入所者定員数、職員数の違いに応じて回答結果に差が出ています。また、雇用体制の整備、事故やトラブルへの対応体制の整備、職員の要望を聞く機会の設定等が充分になされることが、職員のストレスを解消する上で役立つという報告もあります。要は大変なところが大変、という事情があまねくあるということの確認ですが、ここで注意したいのは、職員自身が不安を抱き、職員自身が質的低下の危惧を抱くという傾向が存在するということです。

 

「利用者に対しての態度や介護が雑になっていくのがわかって怖くなった」から退職する……という、介護者がモラルを持っているが故の退職というものが多数存在します。

 

 この事態、事情をどう捉えるべきか。
  その解釈は複数あれど、
  ここで私たちが認識すべきは、まず、仮に介護サービスの質的低下を招いている施設があったとしても、その理由を「介護職員のモラルが低いから」と一概に断ずることはできない、ということです。
  彼らを追い込み、彼らに不安を覚えさせる要因が何がしか存在しています。そのことだけは理解しておきたいと思います。

8割以上の施設長が労働条件改善の必要性を認識している環境

以上、介護職員の観点から問題を通覧してきましたが、一方で施設の管理職たる施設長の方々も、同様の認識を持っているそうです。

対象:養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの施設長
労働条件全般について
「改善する必要がある」 …… 49.2%
「現状で十分と思われるが、まだ改善の余地がある」 …… 38.6%
「現状の労働条件であれば十分である」 …… 12.4%

 上述の通り、介護職員の持つ認識とは一定の隔たりが認められますが、とはいえ8割以上の施設長が労働条件改善の必要性を認識している……これは社会一般における他の職場と比べると“異例の高さ”です。

改善すべきポイント
「業務内容・実施方法」 …… 54.6%
「勤務時間・勤務体制」 …… 50.0%
「賃金水準」 …… 36.2%

 介護者に負担がかかっている、というまさにその点を認識しなければなりません。

 


2.アンケート結果報告


はい  
 
   
 
  いいえ
42%
     
58%

 

スタッフの入れ替わりが多い:42%

スタッフの入れ替わりが多いと答えたのは全体の42%の方々です。割合としては決して低いとはいえない数字ですが、ご意見を参照すると、それぞれの利用者の方が様々な思いを巡らせていることがわかります。(詳細は以下に掲載させて頂きます!)
多いと回答された方のなかでも、とりわけ「頻繁」と答えたのは6割くらいの方々でしょうか。「入れ替わりが激しい」という表現が散見され、一部状況の難しさが推察されます。

スタッフの入れ替わりが多くない:58%

スタッフの入れ替わりが多くないと答えたのは全体の58%の方々です。しかし、多くないと回答された方のなかにも、「もしかしたら入れ替わりが激しいのかも」「個々のスタッフは良いのだが皆過労気味!」「担当の方が休みの場合は、対応が不十分な面があり」等、体制への不安を口にするケースが目につきます。反面、「(職員が)家族的で、同じ話を何度でも笑顔で聞いている。職員も同じ人が良く見てくれる。」など施設への信頼を感じさせるコメントもあり、良い関係が築けている場面に安心することができますね(笑)


3.【あなたがご意見番!!】


入れ替わりが激しい具体例

「事務員はほとんど入れ替わりがないが、現場は3か月ごとに知らない人が担当している。」(66 歳 男性)
「2週間単位に介護スタッフの入れ替わる」(50 歳 男性)
「職員、特にケアワーカー(寮母)の入れ替わりが非常に激しいと言える。施設が出来て十年になるが、施設創立当時から勤務しているケアワーカーは二十五人中で四人である。一日や一週間や十日、一月で辞めるケアワーカーは数え切れないくらいいる。私と親しいある寮母の話では、仕事がきつく給料が安いとのこと。」(61 歳 女性)

[matuda]頻繁なところでは、まさに「入れ替り立ち代り」という表現が相応しい状況のようです。

入れ替わりの多い事情

「同じフロァーでは、チームワークが大切だと思う。なかなかチームに入りきれない内に姿が見えなくなる事がある。」(63 歳 女性)
「夜一人の当直になる。何かあったら怖い。それでやめてしまう。と言う話を聞きました。またある施設では新人にきつい仕事を回すので新人は常にやめてしまう。使い捨てで良いとのこと。」(65 歳 女性)
「ヘルパーさんたちはまず腰を痛めるとききました。希望をもってはいってくる若者も毎日の介護生活で夢をもてなくなりやめてしまう子もいるとききます。」(52 歳 女性)

[matuda]個人に負担のかかる環境では、どうしても仕事を続けるのが難しくなっていきます。

入れ替わりが少ない具体例、入れ替わりが少ない理由

「利用し始めた2003年から担当者は替わっていないので、扱い方も心得てくれている。若い人が多いのでエネルギーがあふれていて元気が出てくるようだ。ルールにのっとって対応してくれるので、本人も納得して行動しているのは良いことだと思う。複数の職員で事に当たっているので、一人だけに責任が重くのしかからないことが明るい雰囲気を作っているのだと思う。」(58 歳 女性)
「現在、お世話になっている施設では、大勢のスタッフがおり、特に入れ替わりは感じておりません。スタッフの固定化より、キーになるスタッフが定着しているようで、ここ数ヶ月目だった入れ替わりは感じておりません。」(53 歳 男性)
「施設内での部署変更があり担当は変わってるようだが、引継ぎは行われてる。」(59 歳 男性)

[matuda]入れ替わりが多い場合とは逆に、うまくいっている施設はチームで対応する、連携を取るといった体制が整備されている模様です。

入れ替わりは少ないけど・・

「職員の入れ替わりはさほどないようですが、担当の方が休みの場合は、対応が不十分な面があります。」(50 歳 女性)
「個々のスタッフは良いのだが皆過労気味!人が少なすぎ」(58 歳 男性)

[matuda]入れ替わりが少なくても、別の箇所に歪みは出ている。そんな例が垣間見えます。

施設とのコミュニケーション

「入れ替わりは激しい。また、入所者の担当が決められているわけでないので、誰に聞いていいかわからない。職員の中で偉そうな人に聞くよりしょうがない。」(54 歳 男性)
「確かによく人が変わります、ですが施設に聞いても理由はさすがに教えてもらえないので分からないです」(55 歳 女性)
「施設職員の給料は生活できないくらい安いようだ。せめて自立して生活できるくらいは欲しいと聞くと、こちらとしてもあまり頼めない。」(51 歳 男性)

[matuda]施設との関係の築き方。そこにむずかしさを感じるケースは少なくないみたいです。

同情

「母の施設では、入れ替わりなどの話はあまり聞かないです。ただ、あまり高くないお給料で、施設も割りと辺鄙な場所にあるので、ご苦労は多いだろうと思います。」(52 歳 女性)

[matuda]今回のアンケートでの大きな発見は、施設職員の方の事情に思いを傾けている方々がたくさんいらっしゃるという事実です!

その他

「ある程度の入れ替わりは、しかたないのじゃないか。病院でも入れ替わりがあるし、その程度だから、問題にならない。」(58 歳 男性)
「加重な労働にたいしては行政が補助してもよいとおもいます。そのためなら福祉目的消費税もやむをえないと考えます。」(58 歳 男性)

[matuda]問題が根深い分、応じる姿勢も多様化します。最近話題の福祉目的税ですが、それが「明確に必要とされる使途」というのが確かに存在しています。


4.まとめ 利用者の視点から浮き上がるもの


介護職を取り巻く労働事情への理解可能性

皆様のご意見を拝見すると、非常に多くの方が、介護職員を取り巻く労働事情の厳しさを察しており、また、思いを巡らせているという事実に気づかされます。不憫に思う、同情する、申し訳なく思う、問題意識を持つ。既に様々な感想を抱いていらっしゃるようです。
利用者として、ただ単純にサービスを受ける側としての意識だけがある、という状態からは一歩進んだ意識の持ち様がありうる。その可能性が示されています。

コミュニケーションの問題(介護者間、介護者-被介護者間)


そしてもう一つ、重要な観点として気づかされるのが、“コミュニケーションの問題”です。

既に上でも参照した通り、「スタッフの入れ替わり」という事態が発生している際で、「誰に聞いていいかわからない。職員の中で偉そうな人に聞くよりしょうがない」「施設に聞いても理由はさすがに教えてもらえないので」という違和感を表明されている方がおられます。一方、職員が入れ替わる場合でも、「しっかりとした引継ぎが行われている」という認識が共有されていれば、決して不安感は覚えないという事例が確認されます。これは、施設と利用者の間での連絡体制の有り様が問題として提起される事態です。
また、介護者同士のコミュニケーションについても同様の問題が提起されます。「チームに溶け込めない内にやめてしまうようだ」というご意見もありましたが、実際、介護労働者に対する調査においても次のような回答が見つけられます。


ストレスを解消する上で役立つ雇用管理面での取り組みとして望むこと
「職場全体の課題を共有できる機会の設定」 …… 92.6%
「上司や先輩に仕事上の疑問点を聞く機会の設定」 …… 91.7%
「働き方や仕事の内容等を上司と相談する機会の設定」 …… 88.1%

 

上記項目が、現状、十分に実践されている
「職場全体の課題を共有できる機会の設定」 …… 32.6%
「上司や先輩に仕事上の疑問点を聞く機会の設定」 …… 28.4%
「働き方や仕事の内容等を上司と相談する機会の設定」 …… 21.0%

 

 逆に言えば、介護者同士のコミュニケーションがしっかりと取られることによってケアされる問題というのが、少なからずあるということです。……ところで介護者同士のコミュニケーションによりケアされる問題とは、具体的には何でしょうか。

 

ある成功事例

 人手不足で走り回る現場。働き始めて疑問に思ったことは数知れず。「何か違う」現場の雰囲気。手が回らず、利用者のペースに合わせることなどとても出来ない。コミュニケーションを取りたくてもその余裕がない。どころか、それをしていると、仕事をしていないように思われる雰囲気さえ存在している……。

 このようなジレンマを抱える環境で、“介護職員同士で話し合ってみる”ことによって問題(そして風潮)を打開したという話があります。それを行った方々は、話し合う前からそれぞれに同様の違和感、不安を抱えていたものの「自分だけではどうしたらいいか分からない」「1人じゃ不安」だったそうです。それが、「周囲が同じことを考えていると分かり安心し」、徐々に、少しづつ問題を改善していったということです。

 

 ……この事例から私たちが教訓として受け取るべきは、「介護職員で話し合え」、というようなことでしょうか。(介護職員の方がこの事例を参考する限りではそうかもしれませんが、)それだけではないとも思えます。
  というのは、要は“不安”なのです。介護者の方が抱える問題のうちの大きな一つ(且つコミュニケーションによってケアされる最たる問題の一つ)こそが不安なのだと、思いませんか?

 

 であるなら、この【あなたがご意見番!!】において皆様から寄せられたご意見を参照した上で、提案しうる事柄があります。
それは、「利用者が介護者を支える」という視点の導入です。

 

 私たちは多くの場合、施設を利用するにあたって自らを消費者と認定し(事実そうですが)、金銭を支払う対価としての介護サービスを、当然のものとして受け止めます。この認識自体は正当なものであり、間違いでありません。但し、そのサービスの担い手である介護職員にとっては、介護職は決して当然の職業ではなく(=より条件の良い職業は他にいくつもある!)、また、苦労の対価に充分見合う何かを得られているわけでもありません。それでもなお介護職を務めている方々を、そこに潜む困難、労苦、不安をいまいちど理解した上で支える、ということ。

 支えるというのは難しいことじゃありません。介護職員が抱いているかもしれない不安や悩みを聞いてあげる、一緒に考えてあげるということです。

 こうした視点こそ、「みんなの声で日本の介護をよくしよう」という理念の下に、皆様から寄せられた声――傾向そして可能性――を元として提案されるものだと思います。

(これまで見てきたように、介護職を取り巻く労働事情の難しさは根深いものです。これを根本的に解消するためには、施設の体制の転換、抜本改革、あるいは社会的制度的保障の構築等が求められるかもしれません。こうした事柄に立ち向かうのは重要ですし、老人ホームマップ等の媒体含め、社会的主張、社会的運動を継続していくことが必要なのだと思います。しかし、これらは全体として、個人の行いの延長にあるものです。つまり、私たちが直接実践できること。それをまずやるべきであり、だからこそ「支える」=コミュニケーションです。

 ところで、介護者の方が仕事に対して達成感・喜びを感じる場面というのは、

「入居者の笑顔に接したとき」 …… 90.3%

 だそうです。一方で、

「専門職として社会的に認められていると感じる」 …… 38.1%

 まずは“認める”ことから始めましょう。


参考文献及び引用文献


日本人事行政研究所「福祉関係職員の処遇に関する調査」
日本人事行政研究所「介護員等福祉関係職員の労働条件に関する総合的調査研究」
介護労働安定センター「介護労働者のストレスに関する調査結果」
日本労働党「私の職場は老人ホーム」『労働新聞』